ショートショートなシュールレア①
すごく腹が減っていた。
数えたわけではないのだが、もう二日ほど、ろくなものを口にしていないような気がする。

少しフラフラしながら、海辺の岩場を散策してみた。
岩にこびりついた海苔でも小さな貝でもいいから見つけて、とにかく何かを腹に入れなければ死んでしまう。

すぐに岩の隙間にシオマネキを発見w
指を挟まれながらどうにか捕獲できた。

座れそうな岩をさがして、腰をかけると小さな蟹を生きたままほおばった。
海水の汐の味が蟹の味を一層引き立てて良い感じだ。
殻を吐き出すのが惜しくなって、何度も細かく噛み砕いて飲み込んだ。

もっといるんじゃないかとシオマネキを探したが、あいにくアレ一匹だけだったようだ。

他に食べられそうなものはないだろうかと辺りを見渡すと、隣りの岩の上に何か黒いものが落ちている。
近づいて見るとそれはコンビニのおにぎりだった。

何か怪しいなと思って、回りをキョロキョロ見てみたが、持ち主らしい人の気配もない。
誰かが食べきれずに捨てていったのかも知れない。とりあえずは喰ってもよさそうだ。

紀州梅か。
贅沢を言えば、紅鮭か焼きタラコの方が良かったけれど、コレでも全然問題はない。
口の中に湧き出る唾液を飲み込みながら、ビニールをはがして匂いを嗅いでみる。
腐ってそうな匂いもしない(超ラッキー)。

一口かじる。
久しぶりの米の味。
おにぎりに付いた歯型の飯には梅干からにじみでた赤い色。
次の一噛みで訪れる梅干のしょっぱさに備えて、口の中はさらに唾液の洪水。
コレを旨いと言うのだ。

一口目の米を8噛み程でごくりと飲み込み、梅干目指して二口目にかぶりついた。

その瞬間。


上あごから脳天に突き抜けそうな猛烈な痛みが走った。
何が起こったのか咄嗟にはわからない。くさびのような物が上あごに刺さっている!?
とにかく何か強い力に引っ張られている。

手を添えると、口から見えない彼方へと続く光る糸。何かにまんまとはめられた。
口を大きく開けたまま、嫌が応にも顔はあさっての方角を向く。

必死にあらがうが、意思に反して身体は海に向かって引きずられる。
声も出せないまま必死で両足を踏ん張るが、足場が悪すぎる。上あごがとにかく熱い。

海に引きずり込まれたら絶体絶命。頭ではわかってる。でも、全力で耐えるには、あごが痛過ぎる。

やがて足もとを波にすくわれ、むなしく海の中へダイブした。
それでも陸へ上がろうと必死でもがいたが、暗い深海に向かって身体はブクブクと沈んでいく。

もうだめだ。
死ぬ。絶対死ぬ。

それでも身体は生きたいらしい。
息を止めて限界まで耐える。












やがて何者かが身体をくるんだ。
いくらもがいても取れなかった上あごの槍が一瞬の痛みと共に抜けた。

目を白黒させながら、前を見据えると見たこともない大きな魚がこっちを見て微笑んでいる。

「Good Fight!」

薄れゆく意識の中で大きな魚がそう言ったのを覚えてる。顔にキスをして確かにそう言ったんだ。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
気が付くと砂浜の上にいた。

岩場で蟹を食べたのが、今朝なのか昨日の朝なのかはわからない。

太陽は水平線の向こう側に行こうとしていた。
満ちた潮が身体を半分浸していた。


海はもういい。海に入るのはもうこりごりだ。
何度もそう呟いて、砂浜をはいずって浜茄子の咲く陸に上がった。
まだ痛い口の中は苦い砂でジャリジャリしていた。




日記風に仕立ててみた。
魚釣りを逆の立場で考えるとこんな感じだろうかと。
俺は罪深い。

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by shigekkies | 2007-11-10 01:27 | たわごと
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